仕事人 予測力で１２０％の笑いに

仕事人　予測力で１２０％の笑いに

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090621-00000510-san-ent

6月21日9時6分配信産経新聞拡大写真芸人の笑いを逃さない辻稔さん。「その瞬間」に集中する＝東京・台場のフジテレビ（早坂洋祐撮影）（写真：産経新聞）■バラエティー番組の売れっ子カメラマン・辻稔さん（４１）東京・台場のフジテレビ内のセットで、赤ん坊ほどの大きさもあるカメラを抱えて動き回る。なめるように表情を撮影する相手は、お笑いコンビ「ナインティナイン」の岡村隆史。バラエティー番組「めちゃ×２イケてるッ。」内のコーナー「やべっち寿司」の収録現場で、技術スタッフのチーフとしてカメラを構える。個性的な芸人が集まり、次は何が起こるか分からないバラエティー番組で、笑いの瞬間を逃さずとらえる。その腕前は、世界的な報道写真家になぞらえ「バラエティー界のロバート・キャパ」と評されることもある。フリーながら、レギュラーだけで４番組を担当する売れっ子だ。ゲストに相づちを打つ岡村に合わせ、左手でカメラのズームを調整する。突然、岡村がセットのカウンターに突っ伏す。同時にズームアウトし、伸ばした両手の先まで画面に収める。次の瞬間にはカメラを横にずらし、吹き出すゲストの顔もばっちり押さえた。売れっ子の理由は、この「予測力」にある。勘ではない。岡村らレギュラー陣はもちろん、ゲストの芸人もほかの出演番組を見て芸風を研究し、動きを予測する。ダチョウ倶楽部の上島竜兵だったらキレた瞬間を印象的に、エド・はるみは全身の決めポーズを映した後、瞬時に顔アップへ…。だから、収録当日の打ち合わせはその企画のポイント確認程度だ。「撮り逃してしまう怖さもある。心がけているのはその人の気持ちになり、『この人だったらどう動くか』と行動を考えること。ここでは３人目のナイナイになったつもりで撮っています」本番では少しも気が抜けない。毎回収録を終えると、左手は汗でじっとりと湿っている。静岡県沼津市で食堂を営む両親の元に生まれた。カメラとの出合いは中学生。放送委員として体育大会や部活でビデオ撮影を担当し、夢中になった。進学した私立高校でも放送部に入部し、２年の夏には、先輩と女子ソフトボール部のドキュメンタリーを制作、全国高校放送コンテストに出品した。負けた試合に焦点を当てた作品で県大会１位を取ったが、全国大会出場は逃す。「自分だったら、どんな作品が見たいのか」。次に、同じチームの勝ち試合を取り上げた。勝っても内容に納得しない監督は選手を「ふがいない」と叱咤（しつた）し、選手は涙を流す。別のコンテストに出品すると、全国２位。手応えを感じた。放送学科がある大学の受験に失敗。都内の専門学校へ進み、制作会社へ就職した。バラエティー番組の収録現場で、アシスタントとして雑用をこなす傍ら、空き時間に撮影を練習した。ある日、練習映像の一つが「アングルが面白い」とディレクターの目に留まり、入社１年でカメラマンデビューを果たした。２つの制作会社を経て４年前に独立した。一本一本に忘れ難い思い出が詰まっている。駆け出し時代に担当した「志村けんのだいじょうぶだぁ」で基本を学んだ。志村は仕事に対し、妥協がなかった。コント収録当日、志村が「セットのイメージが違う」と首をひねり、収録が先送りになったこともある。先輩スタッフたちには撮影のいろはをたたき込まれ、思うような画が撮れないと容赦なく怒られた。スタジオの隅で悔し涙を流したこともある。「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば。」「新しい波」「とぶくすり」「ロンドンハーツ」「内村プロデュース」「アメトーーク」…。ナインティナインやよゐこ、雨上がり決死隊など次代を担う芸人やスタッフと出会い、刺激し合って、大胆なカメラワークと予測力を磨いた。昨夏の「２７時間テレビ」内で登場した「やべっち寿司」には、３０人近いタレントが参加した。通常なら数台のカメラを使うが、使用したのは明石家さんまと矢部浩之につけた専用カメラを含めわずか３台。狭い空間にひしめく残りのタレントたちを、予測力を武器に１人で撮りきった。今は仕事が名指しで舞い込む。「めちゃイケ」の中嶋優一プロデューサー（３６）は「辻さんはまさにプロ。アドリブが多いのに、次を予測できる」と全幅の信頼を寄せる。しかし、自身の仕事に満足したことはない。「主役である『映る人』の１００％の面白さを１２０％にするのが僕の仕事だと思っています。まだまだ上を目指したい」（滝口亜希）

[引用元：Yahoo[エンタメ総合（産経新聞）]]

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